ジョン・ロブ
#John Lobb
キングオブシューズ
「車はくれてやるから、トランクに入れてあったジョンロブの靴だけは返してくれ。」これは車を盗まれた持ち主が犯人に叫んだ言葉だった。ジョンロブがもはやシューズの枠を超えている事がこの逸話からもわかるだろう。
創業者ジョン・ロブ氏が生まれたのは1829年のこと。
ロンドンで修行を終えた後1950年代ゴールドラッシュに沸くオーストラリアで鉱夫用のブーツを作り、靴職人として名を上げる。オーストリアで成功を収めたジョン・ロブは翌年の1863年ロンドンへ戻り1862年に万国博覧会で、金賞を受賞した。翌年にはロイヤルワラント(英国王室御用達)の称号を獲得している。
驚くべきはジョン・ロブはこの時店舗開店前で、店舗を開店したのはこの3年後だった。1866年ジョン・ロブはロンドンのリージェント・ストリートに第一号店をオープンした。店舗開店後にはすぐに一流のブーツ職人としての地位を築き政治家や財政エリートなど上流階級の支持を集めた。
その後、1902年には、二代目がフランスのパリにもブティックを出店、現在でも受け継がれている名モデル「ウィリアム」(William)、「ロペス」(Lopez)などを生み出し、洗練されたパリっ子たちをも魅了した。
第一次世界大戦を経て、世界中にブティックを展開するようになったが、ここでジョン・ロブに転機が訪れる。手間とコストがかかるジョン・ロブのシューズ生産は、やがて経営難の危機を迎える。ついに1976年には、パリの2号店も閉店を迫られた。そこで救いの手を差し伸べたのがエルメスだった。パリ支店の閉鎖に伴い、エルメスはパリ支店とジョンロブの商標を取得。
創業以来、ジョン・ロブが創ってきたビスポーク靴の品質を守りつつも、既製靴として表現する計画を始めた。ブランドの危機を脱したジョンロブは、1982年初めての既製靴コレクションを発表した。これが通称「ジョン ロブ パリ」と呼ばれる。
この時、ロンドンのお店、John Lobb Ltd.だけは一族の手に残り、今でも「ジョン・ロブ・ロンドン」(John Lobb London)の名前で、ビスポーク専門ブランドとして独自に運営を続けている。
ジョン ロブパリの既製靴は、1994年に設置されたノーサンプトンの工場で作られる。ここでは、100年を超えるビスポークの歴史で培った技術をもとに、1足あたり190工程という膨大な手間をかけ、既製の究極を目指す靴作りが行われている。
これは、ジョン・ロブが今も尚、キングオブシューズと呼ばれる所以だ。